「食事を食べない理由がわからず困っている」
「食事を食べてくれないと栄養不足が心配」
「食べてもらうにはどうしたら良いの?」
高齢になると、活動量の低下や機能低下により、食が細くなる傾向があります。極端に食事を食べないとリスクが起こる恐れがあるため、早めに対処する必要があります。
この記事では、以下の内容について解説していきます。
- 高齢者が食べないことで起こる3つのリスク
- 高齢者が食事を食べない7つの原因
- 食べないときの対処法3選
高齢者が食事を食べなくなり理由がわからない方や具体的な対処法がわからない方におすすめの内容です。
高齢者に元気で生き生きとした毎日を過ごしてもらうためにも、ぜひ参考にしてみてください。
高齢者が食べないことによる3つのリスク
高齢者が食事を食べなくなると、栄養状態が悪くなり、健康維持を害する恐れがあります。高齢者が食べないことで生じるリスクは次の3つです。
1.低栄養
高齢者が食べなくなると、低栄養になるリスクが高まります。
低栄養とは、食欲不振により、活動に必要なエネルギーや栄養素が不足した状態になることです。低栄養になると、筋肉量や体力が減り、日常的な動作に必要な運動能力も低下します。
それにより活動量が減り、お腹が空かず、食べなくなってしまうという悪循環に陥るのです。体重も減り、寝ていることが楽になり、活動しなくなることも少なくありません。
2.低血糖
高齢者が食べないリスクとして、低血糖も挙げられます。低血糖とは、血糖値が正常範囲以下に下がった状態のことです。
低血糖になると、めまいや疲労感、眠気や冷や汗などの症状を引き起こします。慢性的に低血糖が続くと、さまざまな健康障害を引き起こす恐れがあるため要注意です。
特に心身ともに衰えて、病気ではないけれど介護が必要になりやすい「フレイル」と呼ばれる状態に陥る可能性があります。
3.脱水
食べない高齢者は食事から水分を摂取できないため、脱水状態になりやすくなります。脱水とは、必要な水分や電解質が不足した状態のことです。
加えて、高齢者はのどの渇きを感じる「口腔中枢」が衰え、水分が必要な状態に気づけなかったり、トイレに行きたくなくて水分摂取を避けたりすることも、脱水を引き起こす要因となるでしょう。
他にも、服薬による利尿作用により、水分の排出量が増えて脱水のリスクを高めてしまうこともあります。
高齢者が食事を食べない6つ原因
高齢者が食べない原因の多くは、身体機能の低下や脳機能の低下です。ここでは、主な原因を7つご紹介します。
1.加齢による味覚の変化や機能低下
加齢に伴う身体的な変化が原因で、食事を食べなくなることがあります。たとえば、以下のようなことです。
- 味覚や嗅覚の衰え
- 胃腸などの消化器官の機能低下
- 食べ物をうまく飲み込めなくなる嚥下障害
- 噛む能力の低下
食事がしにくくなったり、食道に詰まったりすることで、食べる意欲を失ってしまうことがあります。これらの原因による食欲低下は、食事の工夫次第で改善することも可能です。
2.口腔内トラブル
高齢者が食べない原因として、口腔内トラブルも考えられます。虫歯や歯周病、入れ歯の使用、口が乾燥することによる自浄作用の低下などにより、食事が摂りづらくなっているのかもしれません。
口腔機能が低下すると、以下のような症状が見られます。
- むせやすくなった
- 固いものが食べにくくなった
- 食事に時間がかかるようになった
- 口臭が気になるようになった
- 食べこぼしが多くなった
これらの症状は、口腔トラブルのサインです。適切な治療やケアをすることにより、食事を食べるようになるケースもあります。
3.精神的なストレス
精神的なストレスを抱えている場合も、食事を食べなくなる原因のひとつです。介護してくれる方に対する気遣いや、食べること自体にストレスを感じている可能性があります。
精神的なストレスを抱えている場合は、胃腸などの消化器官にも影響があるため、無理に食べさせようとさせないようにしましょう。何がストレスになっているのか慎重に見極めて、改善してあげる必要があります。
4.不規則な生活習慣
生活習慣が乱れていることで、自律神経が乱れて、食欲が沸きにくくなることがあります。不規則な生活習慣とは、運動不足や睡眠不足、偏った食事などです。
高齢者になると、活動量が減るため、運動不足になりやすくなります。また、早寝早起きになったり、睡眠が浅くなったりすることで、睡眠不足に陥ることも少なくありません。
定期的な運動と栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠や休息により、自律神経の乱れを改善することが、食欲の回復に繋がります。
5.社会的な要因
高齢者の一人暮らしの方に多いのが、外出が減って、閉じこもりがちになることです。社会との接点を持たない生活により、あらゆる面で意欲の減退を招くことがあります。
食事のための買い物や準備が負担に感じ、食への意欲の低下に繋がることも少なくありません。
6.病気
高齢者が食べないときは、病気による食欲低下も考えられます。
風邪や消化器官の病気(胃炎や胃潰瘍、肝臓病など)、かん、心不全などのさまざまな病気が原因で、身体面でも精神面でもストレスを感じて、食欲の低下に陥ることも多いです。
また、後期高齢者に多い認知症も食欲不振に繋がります。食事を食べ物として判断できなかったり、箸の使い方がわからなかったりして、食べる行為を忘れてしまい、ひとりで食事をすることが困難になることが要因です。
高齢者が食べないときの対処法4選
高齢者が食べないときは、食事や環境の見直し、生活習慣の改善を図ることが大切です。ここでは、4つの側面から対処法を解説していきます。
1.味わう喜びを取り戻すための工夫する
高齢者に食事を食べてもらうためには、個々の状態に応じた食事の工夫も必要です。
食べやすく、消化に良いメニューにする
嚥下障害や消化機能の衰えなどのある高齢者には、食事の形状や質を見直してみましょう。
食べやすくて消化に良い内容の食事を用意することが大切です。以下の要素を含む食品を取り入れてみてください。
- のど越しが良いもの
- やわらかいもの
- 冷たくてさっぱりしたもの
- のどに潤いを与えるもの
たとえば、おかゆや雑炊、お茶漬け、饂飩やそうめん、茶わん蒸し、プリン、ヨーグルト、ゼリー、柑橘系意外の果物などは、消化にやさしいメニューです。
食べたいときにすぐに食べられるよう、作り置きや冷凍保存などで常備しておくと良いでしょう。また、食事の姿勢にも注意を払い、飲み込みやすいように体勢をサポートすることも大切です。
手でつまめるメニューを取り入れる
高齢者は食事を摂ることすら、億劫に感じてしまうことも珍しくありません。なかなか食が進まない場合、食事の介助をしようとする方もいるでしょう。
ですが、できる限り自分の意思で食べることが大切です。一口大のおにぎりや海苔巻き、サンドイッチやカステラなどの手でつまめるメニューを用意し、食べる意欲を失わせないようにしましょう。
食事回数や量を見直す
1食に食べられる量が少ないときは数回に分けて食べるようにしましょう。高齢者の方は、食事を残してしまうことに対する罪悪感を抱いたり、プレッシャーを感じてしまったりすることも少なくありません。
1食の量を少なめに盛り付けることで、少量でも完食できたという自信に繋がり、食べる意欲を取り戻せることがあります。
決まった時間や量を摂ることにこだわらず、1日の中で必要な栄養量を補うことが大切です。
間食で不足しているエネルギーを補えるような食品を取り入れる、油を使った調理法や味付けを取り入れるなど工夫をしてみてください。
2.食事を楽しめる環境を作る
食事はもちろん、食事を摂る環境も見直すべきポイントになります。高齢者にとって、ストレスフリーな食事環境を作ることを意識し、食事を楽しみに変える工夫をしましょう。
家族や介護者と一緒に食事をする
家族や介護者が一緒に食事を摂ることも効果的です。食事中に会話が弾めば、リラックスして食事を摂れます。一人暮らしの高齢者は、食事が味気なく感じてしまうことも多いです。
ですが、誰かと一緒の食事なら、楽しく感じて美味しく食べられます。明るい食卓を囲んで食べれば、食欲を刺激することにも繋がるでしょう。
盛り付けなどを工夫する
高齢者の食事は見た目にも配慮しましょう。料理の見た目も食欲に影響を与えるからです。介護食は咀嚼や嚥下がしやすくなる反面、見た目が悪くなり、食欲の低下を招きやすいです。
彩りよく仕上げるためには、いろいろな野菜を使用したり、花型など型どりをして盛り付けたり、ソースなどの調味料を上から装飾するようにかけるなど、工夫してみてください。
食べたいメニューを用意する
食事へのプレッシャーを軽減するためにも、選択肢を提案してみましょう。食事に対する意欲や楽しみが増せば、無理なく食事を摂れるように促せます。
食べたいメニューや好きな物を普段からヒアリングし、それに応じたメニューを用意してみてください。カタログやチラシを見せて、食べられそうか聞いてみても良いでしょう。また、食べることがストレスにならないように、義務的に食べるのではなく、食べたいときに食べることもポイントです。
3.水分補給と口腔ケアを行う
入れ歯の不具合や歯周病などの口腔トラブルがある場合は、定期的な歯科検診を受けて、ケアする必要があります。それらが要因で、食べ物の摂取を困難にしてしまうことがあるからです。
以下のような日常的な口腔ケアを習慣化することで、口腔内のトラブルを予防できます。
- こまめな水分摂取
- 口腔保湿ジェルの使用
- 適切な口腔清掃
口腔機能の維持や向上により食事の際の不快感を軽減し、食欲を促進させることは、免疫機能や抵抗力を高めるだけでなく、高齢者のQOL(生活の質)の向上にも繋がります。
4.規則正しい生活をする
高齢者が食事を食べない場合、生活習慣が食事に影響を与えている可能性もあります。そのため、規則正しい生活をすることも重要です。
適度に運動する
普段の生活に適度な運動を取り入れることで、空腹を感じやすくなります。高齢者は筋力が低下し、外出が面倒になることで、活動量も低下しがちです。
家事や散歩など日常の中で意識して体を動かすことで、空腹を感じて、食べる意欲が湧きやすくなるでしょう。
十分な睡眠を確保する
高齢者の中には、十分な睡眠がとれずに慢性的な疲労感や体調不良を感じている方も少なくありません。高齢者は眠りが朝くなりがちで夜間のトイレの不安などにより、睡眠不足になりやすいです。
良質な睡眠をとるためにも、入眠の3時間前までに食事を終える、ゆっくり入浴するなど、リラックスして過ごす時間を設けましょう。
ストレスを溜めない
精神的なストレスは胃腸の働きにも影響して食欲の低下を招くため、溜めずに解消することが大切です。体を動かす、友人とおしゃべりをする、趣味を楽しむなどの時間を意識して作り、ストレスを溜めずこまめに解消することを心がけましょう。
食べない高齢者も喜ぶ!簡単&栄養たっぷりレシピ3選
食べない高齢者には食べやすくて栄養のある食事がおすすめです。ここでは、簡単で栄養たっぷりのレシピをご紹介します。
1.やわらか鶏肉と野菜の煮込み
やわらか鶏肉と野菜の煮込み、圧力鍋で煮るだけなので簡単に調理できます。薄味でやわらかく仕上げることで、野菜と鶏肉の素材の美味しさを味わえるのがポイント。高齢者の方も食べやすいメニューです。
材料(1人分)
- 鶏もも肉100g
- 大根:300g程度
- にんじん:1/2本
- しいたけ:2枚
- 白だし:大さじ1.5
- みりん:大さじ½
- 砂糖:大さじ1/2
- 醤油:大さじ1/2
- 水:150ml
- 小ねぎ:少々
作り方
- 大根は2㎝ほどの半月切り、にんじんとしいたけは適当な大きさに切る
- 鶏肉は一口大に切る
- 圧力鍋に①と②、水と調味料を全て入れて蓋をして中火にかける
- 15分高圧で加熱したあと、圧が下がるまで放置。蓋を開けて10分煮詰める
- 皿に盛り付けて、小ねぎを散らして完成
2.かぼちゃのポタージュ
かぼちゃのポタージュは、ほっこり甘く、クリーミーな口当たりで飲み込みやすいです。かぼちゃはビタミンやミネラルも豊富で、ポタージュにすることで栄養を余すことなく摂れます。
隠し味の醤油を入れてコクをプラス。牛乳を生クリームにすれば、さらに濃厚な味わいになります。多めに作って冷凍しておけば、食べたいときに解凍するだけなので便利です。
材料(3~4人分)
- かぼちゃ:1/4個
- 玉ねぎ:1個
- 牛乳:200ml
- 水:200ml
- 固形コンソメ:1個
- バター:適量
- 塩:少々
- こしょう:少々
- 醤油:小さじ1/2
作り方
- かぼちゃを適当な大きさ乱切り、玉ねぎはくし切りにする
- 鍋にバター、玉ねぎを入れて炒める
- 玉ねぎがしんなりしてきたら、かぼちゃも加える
- 水とコンソメを入れて煮る。始めは中火、沸騰したら弱火にする
- やわらかくなたら、ミキサーで攪拌する
- 鍋に戻して牛乳を入れて弱火にかける
- 塩こしょうと味を調えたら完成
3.豆腐と野菜のスチーム
豆腐は高タンパクで消化が良く、やわらかいので食欲が落ちている方でも食べやすいです。蒸し料理にすることで、素材の味を活かしつつやわらかく仕上がります。季節の野菜を一緒に蒸せば、彩りも鮮やかで食欲をそそります。お好みのたれでいただきましょう。
材料
- お好みの野菜(にんじんやれんこん、ブロッコリーやきのこ類など):適量
- 豆腐:1/3~1/2丁
作り方
- 食べやすい大きさに切った野菜を鍋(タジン鍋がおすすめ)に並べて蓋をして蒸す
- 野菜に火が通タラ、豆腐を乗せ蓋をしてっさらに5分弱火で蒸せば完成
高齢者が食べないときはその理由を探り、適切な対策により改善を図ることが大切です。食事を楽しみながら美味しく食べられるよう工夫やサポートをしていきましょう。